私たちが普段何気なく使っているキーレスエントリーシステム。リモコンのボタンを押すだけで、離れた場所から車のドアロックを操作できるこの便利な機能は、一体どのような仕組みで成り立っているのでしょうか。その秘密は、リモコンキーから発信される「信号」と、それを車体側が受信するという、シンプルな通信にあります。キーレスエントリーの信号方式には、大きく分けて「赤外線式」と「電波式」の二種類が存在します。赤外線式は、テレビのリモコンと同じように、目に見えない赤外線の光を使って信号を送る方式です。初期のキーレスエントリーに採用されていましたが、リモコンを車体側の受信部(ドアミラーの付け根など)に正確に向けなければならず、間に障害物があると反応しないという弱点がありました。現在、この方式はほとんど使われていません。これに対し、現在の主流となっているのが「電波式」です。リモコンのボタンを押すと、それぞれのキーに固有に割り当てられたIDコードを含んだ電波が発信されます。車体側に設置された受信機(レシーバー)がこの電波をキャッチし、IDコードが事前に登録されたものと一致するかどうかを瞬時に照合します。IDが正規のものであると認証されると、車はドアロックを制御するモーター(アクチュエーター)に信号を送り、施錠または解錠のアクションが実行されるのです。さらに、多くのシステムには「アンサーバック機能」が備わっています。これは、車が施錠・解錠の動作を完了した際に、ハザードランプを点滅させたり、「ピッ」という電子音を鳴らしたりして、操作が確実に行われたことをドライバーに知らせる親切な機能です。この一連の「発信・受信・照合・実行・応答」というプロセスが、わずか一秒足らずの間に行われることで、私たちの快適なカーライフは支えられているのです。