バイクの鍵が抜けなくなるトラブルは、鍵穴内部の異物や潤滑不足だけでなく、長年の使用による鍵そのものの摩耗が原因であることも少なくありません。鍵は消耗品であり、いくら頑丈に見えても、抜き差しや回転を繰り返すうちに少しずつ形が変わっていきます。この鍵の摩耗が、ある日突然、鍵穴からの抜けを阻害する原因となるのです。鍵の摩耗は、目視では分かりにくいほど微妙な変化であることがほとんどです。特に、鍵のギザギザした部分の先端が丸くなったり、鍵の厚みがわずかに薄くなったりすることがあります。このような微細な変化でも、鍵穴の内部にあるタンブラーピン(鍵のギザギザに合わせて上下するピン)との正確な噛み合いが失われ、鍵が途中で引っかかって抜けなくなる事態を引き起こします。もし、鍵を挿し込んだり回したりする際に、以前よりもスムーズでなく、少し引っかかりを感じるようになったら、それは鍵が摩耗し始めているサインかもしれません。このような兆候が見られたら、早めにスペアキーの使用を検討するか、新しい鍵の作成を考える時期かもしれません。摩耗した鍵を無理に使い続けると、鍵穴の内部機構にも負担がかかり、鍵穴自体が故障してしまうリスクも高まります。鍵が抜けなくなった際の対処法としては、まず、鍵穴専用の潤滑剤を少量吹き付け、鍵をゆっくりと左右に小刻みに動かしながら引き抜いてみることを試します。この際、鍵をねじったり、強い力で引っ張ったりすることは絶対に避けてください。摩耗している鍵は特に折れやすくなっていますし、鍵穴内部を損傷させてしまう可能性もあります。また、もしスペアキーをお持ちであれば、そちらを使ってみるのも良いでしょう。スペアキーがスムーズに抜き差しできるのであれば、やはりメインキーの摩耗が原因である可能性が高いです。しかし、スペアキーでも同様の症状が出る場合は、鍵穴側に問題がある可能性が高いです。鍵の摩耗を防ぐためには、鍵穴の清掃と潤滑を定期的に行うことが重要です。鍵穴内部にホコリや砂が溜まると、鍵との摩擦が増え、摩耗を早める原因となります。また、鍵をキーホルダーにたくさん付けていると、鍵自体の重みで鍵穴に負担がかかり、鍵や鍵穴の摩耗を早めることがあります。できるだけシンプルなキーホルダーを使用するか、鍵一本での使用を心がけるのも有効な対策です。