長年、鍵の修理現場で働いていると「キーシリンダーが回らない」という悲痛な叫びを毎日耳にします。実はプロが現場に行ってみると、ほんの数秒で解決してしまうケースが三割以上にのぼります。鍵の専門家として、多額の出費を覚悟して業者を呼ぶ前に、ぜひご自身で確認していただきたい重要なポイントがいくつかあります。まず第一に確認すべきは、単純すぎて笑われるかもしれませんが「本当に正しい鍵を使っているか」という点です。特に、似たような形状の鍵を複数持っている場合、別の部屋の鍵や実家の鍵を差し込んで、回らないと焦っている方が意外なほど多いのです。シリンダーの入り口までは入ってしまうものの、内部のパターンが合わないため当然回ることはありません。まずは手元の鍵をじっくりと見つめ直してみてください。次に、鍵そのものが「汚れていないか」を確認してください。鍵の溝の部分にガムテープの粘着成分が付着していたり、ポケットの中のゴミが詰まっていたりすると、シリンダー内部の精密なピンを押し上げることができません。鍵を丁寧に布で拭き、もし溝に汚れが詰まっているなら歯ブラシなどで軽く掃除してみてください。これだけで解決することも多いのです。また、スペアキー、特に街の合鍵ショップで作った複製キーを使っている場合は注意が必要です。合鍵は純正キーに比べて精度が低く、わずかな誤差が原因でシリンダーを傷め、次第に回らなくなることがあります。もしお手元にメーカーのロゴが入った「純正キー」があるなら、そちらを試してみてください。驚くほどあっけなく回ることがあります。さらに、ドア側の要因も忘れてはいけません。鍵が回らないのはシリンダーのせいではなく、ドアの建て付けが悪く、鍵が穴にしっかり収まっていないことが原因である場合が多いのです。ドアを強く押し込んだり、逆に浮かせるように持ち上げたりしながら鍵を回してみてください。もし特定の動作をした時だけ回るなら、それはシリンダーの故障ではなく、ドアの調整が必要です。丁番のネジが緩んでいないか、あるいは受け金具にゴミが詰まっていないかを確認するだけで、トラブルが解消されることもあります。鍵の切り欠き部分を鉛筆の芯でなぞるように塗り込み、数回抜き差ししてみてください。鉛筆に含まれる黒鉛の成分が潤滑剤として働き、動作を劇的に改善してくれます。
キーシリンダーが回らないと嘆く前に専門家が教える確認事項