長年、毎日使い続けてきた家の鍵。ポケットやカバンの中で他の物と擦れ合い、何万回と鍵穴に抜き差しされるうちに、その表面は少しずつ、しかし確実に摩耗していきます。そしてある日突然、その摩耗が限界を超え、キーシリンダーを回すことができなくなるのです。普段使っている鍵だけが回らず、保管していたスペアキーなら問題なく回る。もしそんな現象が起きたなら、その原因はほぼ間違いなく鍵自体の摩耗にあります。キーシリンダーは、鍵の表面にあるギザギザの形状によって、内部のピンをミリ単位の正確さで正しい位置に持ち上げることで、初めて回転できる仕組みになっています。長年の使用によって鍵の山が削れて低くなってしまうと、ピンを正しい高さまで押し上げることができなくなり、鍵は回らなくなってしまうのです。これは、鍵という精密な道具の寿命とも言えるでしょう。摩耗した鍵を無理に使い続けることは、非常に危険です。無理な力で回そうとすると、鍵が中で折れてしまったり、シリンダー内部の繊細なピンを傷つけたりする原因となります。そうなれば、鍵の交換だけでなく、シリンダー一式の交換が必要となり、修理費用も高額になってしまいます。スペアキーで回ることが確認できた時点で、摩耗した鍵の使用は直ちに中止すべきです。そして、そのスペアキーを元にして、信頼できる鍵屋で新しい合鍵を作成しましょう。合鍵を作成する際は、摩耗した古い鍵ではなく、できるだけ新品に近い状態のスペアキーを元にすることが、精度の高い合鍵を作るための鉄則です。このトラブルは、定期的に合鍵を作り、複数の鍵をローテーションで使うことで、一本あたりの摩耗を減らし、予防することも可能です。大切な住まいを守る鍵だからこそ、そのコンディションにも気を配ることが重要です。