認知症の家族のひとり歩きに悩み、ドアロックの設置を考え始めた時、ご家族だけで判断するのではなく、ぜひケアマネージャーや福祉用具専門相談員といったプロフェッショナルに相談することをお勧めします。専門家は、数多くの事例を見てきた経験から、ご家族だけでは気づきにくい視点や、より適切な解決策を提案してくれます。専門家がまず重視するのは、ご本人の心身の状態を正しく評価すること、いわゆるアセスメントです。認知機能のレベルはどのくらいか、指先の細かな動きは可能か、身体的な力はどの程度か。こうした点を総合的に判断し、例えば「この方なら簡単なサムターンカバーはすぐに外してしまうかもしれない」「この身体能力なら、この高さの補助錠は届かないだろう」といった、個別の状況に合わせた最適な製品選びをサポートしてくれます。また、専門家は介護保険制度にも精通しています。直接的なドアロックそのものは介護保険の対象外となることが多いですが、関連する福祉用具が利用できる場合があります。例えば、ベッドからの起き上がりや部屋の出入りをセンサーで感知し、ご家族に知らせる「徘徊感知機器」は、介護保険のレンタル(福祉用具貸与)の対象となる可能性があります。こうした機器とドアロックを組み合わせることで、よりきめ細やかな安全対策を講じることが可能です。さらに、ケアマネージャーは、地域の見守りサービスや家族会の情報など、ご家族の精神的な負担を軽減するための社会資源についての知識も豊富です。ドアロックの設置は、あくまでも包括的なケアプランの中の一つの要素です。ひとりで悩みを抱え込まず、専門家をチームの一員として迎え入れ、様々な制度やサービスを賢く活用していくこと。それが、長期にわたる認知症介護を、家族みんなで乗り越えていくための最も賢明な道筋なのです。