真夏の太陽が照りつける昼下がり、男はスーパーマーケットの駐車場で立ち尽くしていました。買い物袋にはアイスクリームが入っており、一刻も早く車を走らせて帰宅しなければならないというのに、車のキーシリンダーが全く回らないのです。外気温は三十五度を超え、アスファルトからの照り返しが容赦なく体力を奪っていきます。車内はすでにサウナのような熱気で、窓越しに見えるハンドルは触れることさえ躊躇われるほど熱くなっていることでしょう。男は額に浮かぶ汗を拭いながら、何度も鍵を抜き差ししましたが、イグニッションは岩のようにびくともしません。最初は単なるハンドルロックだと思い、男は力任せにハンドルを揺らしながら鍵を回そうとしました。しかし、どれほど力を込めても、シリンダーは冷淡なまでに静止したままです。次第に男の心には焦りが募り、頭の中では溶け出すアイスクリームのことや、修理代に消えていく数万円の出費が巡り始めました。「どうしてこんな時に」と天を仰ぎましたが、空は残酷なまでに青く澄み渡っています。男はふと思い立ち、熱せられた鍵そのものをじっくりと観察してみました。すると、長年の使用によって鍵の表面に傷がつき、さらにポケットの中で付着したと思われる微細な埃が、鍵の溝にびっしりと詰まっていることに気づきました。男はバッグの中からペットボトルの水を取り出し、ハンカチを湿らせると、丁寧に鍵の汚れを拭き取りました。さらに、もう使わなくなった古い歯ブラシがカバンの底にあるのを見つけ、鍵の溝を念入りに掃きました。直射日光の下での作業は数分でしたが、男にとっては永遠のように長く感じられました。祈るような気持ちで再び鍵をシリンダーに差し込み、今度は力を入れず、指先の感覚を研ぎ澄ませてゆっくりと回しました。すると、カチリという微かな手応えとともに、キーシリンダーが抵抗なく回転したのです。キュルルというセルモーターの音に続いて、力強いエンジンの鼓動が駐車場に響き渡りました。冷房のスイッチを最大に入れ、冷たい風が吹き出してきた瞬間、男はシートに深く身を沈めました。たかが一本の鍵、されどその小さな金属片がこれほどまでに人間の生活を左右し、翻弄するものかと、男は妙な感動を覚えました。アイスクリームは少し柔らかくなってしまいましたが、自分の力でこの窮地を脱したというささやかな誇りが、男の胸を暖めました。
猛暑の中でキーシリンダーが回らない困難に直面した男の物語